支払督促は、弁済期(支払時期)が到来した金銭または有価証券の一定数量の支払(給付)を求める場合に利用できます。
具体的には、金銭消費貸借、売買代金、家賃支払い、未払い賃金、敷金返還請求などのケースです。
また、簡易裁判所の書記官による書類審査だけで発せられるもので、公判や証拠調べや、相手方に対する審尋などは全くない簡易な手続です。
そして、相手方が意義を申し立てなければ確定判決と同じ効力を持ち、強制執行も可能となります。
反対に相手方が異議を申し立てた場合は、通常の訴訟手続に移行することになります。
なお、支払督促は弁済期が到来した債権について申し立てることが可能ですが、期限が到来していない債権、現実に発生(確定)していない債権、権利(債権)そのものの存在(確認)は、申し立てることはできません。
例えば、離婚して子供の養育費の支払を求める場合は、養育費について双方が合意済で、支払期限がきた分については支払督促が使えますが、双方が養育費についてなんの取り決めもしていない時点で、相手方に対して養育費の存在や、それに基づく支払を支払督促で求めることはできないのです。
このような場合は、通常訴訟によらなければなりません。
申立先
支払を求める相手方の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官です。
その他
1)相手が法人である場合には、その法人の主たる事務所または営業所の住所地
2)事務所または営業所を有する債務者に対する請求で、その事務所・営業所における業務に関して生じたものは、その事務所・営業所の所在地
3)手形・小切手の支払を求める場合には、支払地の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官でもかまいません。
なお、いずれの場合にも、相手方の住所地が日本国内であって、督促状が現実に配達できることが条件となります。
ですから、住所地が不明な場合の公示送達では、支払督促はできません。(但し、仮執行宣言付き支払督促は、公示送達でも可能です)
支払督促を申し立てて、相手方から異議が出された場合は、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所(訴額140万円以下)、または地方裁判所(同140万1円以上)のどちらかでの通常訴訟に移行します。
相手方の住所地が遠隔地で、相手方から異議が出されることが予想される場合には、この点を十分に留意してください。
申し立て方法
申立書には、下記の事項を記載をしなければなりません。
① 両当事者の住所・氏名・連絡先
② 請求の趣旨
相手方に対して、どういう請求をするのか記載します。
たとえば、貸した50万円を返して欲しい場合なら、「金50万円を支払え。」という具合です。
③ 請求の原因
請求の原因(何について請求するか)となる事実を明らかにします。
申し立てには証拠は必要ではありませんが、通常の訴状に準じた「重要な事実」も記載することになります。
もし、相手方が異議を申し立てると通常訴訟に移行することになりますが、この場合は申立書がそのまま訴状となりますから、申立書はきちんと書く必要があります。
証拠を明確にする必要ないからといっていい加減なことを書くと、後で問題になる可能性があるので注意が必要です。
④ 申立費用
裁判所に対する申立手数料は、印紙を申立書に貼って納付します。
他に、書類の送達費用を郵便切手で予納しなければなりません。
切手代は管轄する裁判所や債務者の人数によっても異なりますから、事前に管轄裁判所に確認しておく必要があります。
⑤ 支払督促の流れ
1)債権者(申立人)が支払督促の申立書を簡易裁判所の書記官に提出します。
2)書記官は申立書を審査します。
3)審査の結果、不備がなければ債務者(相手方)に対して、支払督促を送付します。
4)債務者は支払督促について異議がある場合には、受領後2週間以内に異議を申し立てます。
もし相手方が異議を申し立てると、通常訴訟に移行することになります。
5)債務者から受領後2週間以内に異議申し立てが無い場合には、債権者はその日から30日以内に、簡易裁判所書記官に仮執行宣言の申立ができます。
6)書記官は申立書を審査します。
7)審査の結果、不備がなければ債務者に対して「仮執行宣言付き支払督促」を送付します。
8)受領後2週間以内に債務者が異議を申し立てないと、「仮執行宣言付支払督促」は確定判決と同じ効力を持ちますから注意が必要です。
また、債務者が異議を申し立てた場合には、通常書証に移行することになります。
なお、仮執行宣言付支払督促が債務者に受領されると、その時点で債権者は強制執行が可能となります。
強制執行が開始されてから債務者が異議を申し立てても、強制執行は止められません。
強制執行を止めるためには、別途、執行停止の裁判をしなければなりません。
もし、あなたに支払督促が送付されたら、その内容をよく確認しましょう。
そのまま放置しておくと相手方の言い分を全て認めたことになり、強制執行をされる可能性があります。
支払督促を受け取って、次のような場合には異議を申し立てる必要があります。
① 内容が事実と反している場合や、内容が認められない場合
② 自分自身で主張したいことや、主張できる場合
③ 相手の主張していることは認めるが、支払い方法や時期について相手方と交渉したい場合
異議を申し立てする場合
債務者が異議を申し立てる場合、支払督促とともに定型の督促異議申立書が同封されていますから、定められた期限内(支払督促を受領してから2週間以内に裁判所に必着)に必要事項を記載して返送すれば、異議が申し立てられたことになります。
異議申し立てにあたっては、その理由を明記する必要はありません。
異議申し立てにあたって、裁判費用の負担はありませんが、事務連絡用の郵便切手の納付が求められます。
尚、支払督促を受け取っておきながらそのまま放置しておくと、仮執行宣言付き支払督促が債務者に送付されます。
そうなると債権者は強制執行が可能となりますから、その後に支払督促への異議を申し立てても強制執行は停止できないので、制執行停止のための裁判を求めなければなりませんから注意が必要です。
異議が申し立てられると、支払督促に対して異議が申し立てられ通常訴訟に移行します。
訴訟額が140万円以下なら簡易裁判所で、それ以上の額ならば、地方裁判所での裁判となります。
そして、
1)申立人(債権者)に対しては、裁判所から手数料の追納を求める通知が来ます。
2)相手方(債務者)に対しては、答弁書の提出を求められます。
その後は、通常の裁判の手続きに従って進められることになりますが、そうなると弁護士への依頼が必要になる場合もありますから、安易に支払督促を使わないで、できるだけ交渉を通じて返金を求めた方が良いでしょう
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