皆さんが手紙を書くときは、定型郵便で25g以下なら84円切手を貼ってポストに投函しますね。
これは相手が必ずあなたの手紙を読んでくれることが前提で出すからです。
たわいのない内容でしたら気楽に遅れますが、お金の請求や契約の解除、また浮気相手に慰謝料請求する場合だと相手の反応が分かりにくく、話が進まないことがあります。
また、手紙を送っても普通郵便では相手の人が必ず受け取ったという確証は得られません。
相手に届いているはずなのに、相手からは「そんな手紙受け取っていないよ!」と言われたらどうしますか?
そこで、内容証明郵便を相手方に送ることで受け取ったか、受け取らなかったか分かる上、その後の対応が可能になります。
内容証明郵便を送付することで相手への受領の有無確認や、記載内容によって自分の意思を伝える手段となります。
また、郵便局がそれらを立証してくれるので、個人での交渉の最終手段として有益です。
そういった”逃げ得”を許さない為に、内容証明郵便があるのです。
内容証明郵便はどんな用紙を使ってもかまいませんが、一定の書式があります。
1.1枚の紙に書く文字数が決まっています。
1行に20字以内で1枚に26行以内です。
ですから、便箋や白紙のノートでは、いちいち字数を数えながら書かないといけないので、一般的に原稿用紙のようなマス目のある用紙の方が使い易いです。
2.同じ文章を3回書く必要があります。
ただ、3回も同じ文章を書くことは大変ですから、この場合は1度書いた文章をコピーすれば良いです。
書式さえ守れば便箋でもレポート用紙でも構いませんが、こういった手紙を送る場合は、市販されている内容証明の用紙を使った方が書きやすいです。
最近では、WORDで作成した文章を3枚印刷したものを使う方が簡単に作成できます。
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内容証明郵便を出すメリットは、差出人の意思表示や通知の内容、日付を明確に相手方に伝える必要があるときです。
特に後日紛争性が生じる恐れがある場合には、内容証明郵便で文書の内容を証明する必要があります。
しかし、内容証明郵便の内容については、明記した内容が真実である証明ではなく、差出人がどのような内容の文書を書いたかに過ぎません。
通常の郵便での通知は差出日が遅れたり、差出日が誤っていたりするとクーリングオフなど期日が決まっている場合は、クーリングオフが適用されない可能性がありますから、大切な内容を相手に確実に知られせるためには、内容証明郵便を活用しましょう。
また、時効の中断をの催告する場合にも催告を相手方に内容証明郵便で出しておくと、通知日が確定されます。
ただし、この催告は6ヶ月以内に裁判上の請求をしないと時効の中断になりません(民法153条)ので、時効の中断を内容証明郵便で通知する場合は、注意が必要です。
確定日付の付与が必要な場合
確定日付とは契約書や通知書などの権利の得喪や変更に関し、作成後に作成日が争われたり、作成日付を遡及された文書が作成されたりして、後日の紛争になるケースがあるので、日にちを確定するためにも内容証明郵便を出すことで証明されます。
特に指名債権の譲渡や目的とする質権を設定する場合には、確定日付のある証書での通知や承諾(民法467条・364条)が必要です。
内容証明郵便に付される日付は、確定日付の証書に当たります(民法施行令5条6号)ので、債権譲渡通知書や債権質設定通知書などは内容証明郵便で対応できます。
相手に心理的影響を与えることにも、内容証明郵便は有用です。
たとえば、口頭で何度も言っているにも関わらず対応してくれない場合や、しつこく言い寄ってくる者などに対して、法的手段に訴えることを前提に内容証明郵便を出すことで、嫌がらせが無くなったという事例もあります。
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ようやく内容証明を書きあげて郵便局へ持って行き、内容証明郵便として相手方に送ったものの、全ての内容証明に効果が出るとは限りません。
普通郵便で送った場合は、いつ相手方に到達したか分かりませんし、そもそもその郵便が確実に届いたかどうかも分かりません。
ですから、相手方に確実に届いたという「証拠」の為に、内容証明郵便を送る場合は、配達記録付きの書留郵便で送ります。
これにより、相手方へ到着したかどうか、そして確実に受け取ったかは、確認できます。
この「到着したかどうか」と「確実に受け取ったか」ということが、内容証明では一番大事です。
もし、受け取らなければ、相手方はまだ、あなたの内容証明郵便を開封して内容を確認していないはずです。
たとえば、契約の解除や時効中断のための請求や債権譲渡の通知などは、その意思表示を書面で相手に届いたことを証明できないと困ります。
しかし、悪質業者などは内容証明郵便が届いているのを知っているのに、あえて受け取らない者がいます。
このようにせっかく内容証明郵便を出しても、相手に届かないことがあります。
① 留守で内容証明郵便を受け取れない場合
相手方が日中仕事等で不在のため、内容証明郵便を受け取れない場合は?
郵便配達員の不在連絡届を郵便局へ持って行き、内容証明郵便を受け取れば問題ないですが、受け取りに行かない者もいます。
この場合、一定期間郵便局で保管されますが、保管期間が過ぎると差出人に返送されます。
すると、その内容証明郵便は、相手に届いたことになりません。
こうなるとせっかく内容証明郵便を送ったのに、その効力が出ません。
② 相手が受取り拒否する場合
内容証明郵便を出しても受け取らない者もいます。
普通の人は、内容証明郵便を受け取ることは、一生に一度あるか無いかでしょう。
しかし、世に中には、内容証明郵便を頻繁に受け取る者もいます。
悪徳業者などはその代表例でしょう。
こういった業者は内容証明郵便が送られてきても日常のことですから、動揺もしませんし、何ら感情も持ちません。
単に内容証明郵便を無視するだけです。
ですから配達員が内容証明郵便を持ってきても、受け取りを拒否します。
そうなるとその内容証明郵便は「名宛人が受け取りを拒否しました。」と書かれた付箋を付けて差出人に返送されます。
但し、この場合は確かに相手は内容証明の内容は見ていないものの、法的にはその通知は相手に到着したということになります。
内容証明の意思表示は相手に到着してから効力を発しますが、その場合の到着は相手が通知した内容を見たときではなく、相手がその通知を知りえる状態にあればよいとされていますから、受け取りの拒絶は、その通知を知ろうとすればできる状態ですから、その内容証明郵便は受取人に「到着」したといえます。
この受け取りは特定の者である必要はなく、会社であるならばその従業員であれば良いし、個人宅であれば本人でなくても同居している家族であれば良いです。
同様に受取りの拒否も本人が受けとらなくても、同居人が拒否すると、本人が拒否したことになります。
③ 居所が不明の場合
一番困るのが、相手の住所に届かないことです。
借金問題で夜逃げしたり、倒産した場合などは、たとえ内容証明郵便を出しても転居先不明で送り返されます。
少額請求なら諦めがつくかも知れませんが、高額の場合回収できないと自分自身に影響を及ぼすこともあります。
では、この場合泣き寝入りせずに、どうすれば請求できるのでしょうか?
こういう場合は「公示送達」(民法97条2項)をすれば良いです。
まず、相手が最後に居住していた簡易裁判所に、公示送達を申し立てます。
裁判所は公示送達に理由があれば、その内容を裁判所に一定期間提示すると共に、官報や新聞に少なくとも1回掲載します。但し裁判所が相当と認めるときは、官報や新聞に掲載する代わりに、市町村町役場の掲示場に掲示すればよいことになっています。
そして、官報や新聞、または市町村役場に掲示をして2週間経過したときに、その意思表示は相手がそれを見ていようが、見ていなくとも到達したものとみなされ、効果が生じます。
たとえ相手に内容証明郵便を出しても居所不明で返送されたり、居場所を捜して見つからない場合は、公示送達の方法を取るしか方法はありません。
しかし、その効果が生じても、相手が不明の場合は債権の回収は非常に難しいでしょう。
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書留や配達記録郵便で相手方への支払い請求や解約手続を書いても、その内容については何ら証明になりません。
それは郵便局はあくまで郵便封筒について「書留」や「配達を記録」するのであって、中身の請求書や解約届については中を確認していないので、何ら内容を証明することができないからです。
ですから相手に確実に「内容」と「発送日時」を伝えるには内容証明郵便にする必要があるのです。
要するに、内容証明郵便とは、
① どんな内容を
② いつ相手に出したか
ということを郵便局で証明してくれます。
内容証明を作成した人は同じ文面のものを3通作って郵便局へ差し出します。
郵便局では1通を相手方に送り、1通を郵便局で保存し、最後の1通は差出人に返してくれます。
ですから、たとえ相手方が内容証明郵便を受け取っていないと主張しても、差出人は1通持っていますし、郵便局でも保管しているので、間違いなく差出人が「いつ」、「どんな内容」の内容証明郵便を「誰に」出したかを証明してくれます。
但し、郵便局は書き方についてルールを決めていますが、内容については保証しないので、合法・非合法には関与しません。
そして、内容証明郵便を出すことで、相手方に対する心理的効果は大きいです。
では具体的にどのような心理的効果が出るのでしょうか?
① 配達記録付きの書留郵便で送るので、封筒からして普通の郵便とは違った印象与えます。
② 内容証明郵便は通常の郵便とは違った形式で書かれているので、普通の内容とは違う印象を相手方に与えます。
③ 文章の末尾に、差し出した郵便局の局長が内容証明郵便であることを証明する文章と判が押されており、公的機関が証明した書類として受け入れるので、受け取った者はインパクトが大きくなります。
④ 内容も事務的に記載されている上、法的手続を前提に書かれる可能性があるので、受取人は困惑します。
このように販売会社等を除いて、大抵の方は内容証明郵便なんて一生に何度も受け取ることがないので、相手を動揺させ、心理的効果に大きな影響を与えます。
ですから、これまで話し合いに応じなかった相手が急に連絡してきたり、何度請求書を送っても支払わなかった者が清算を求めてくるなど、内容証明郵便を出すことで、これまでの問題が一気に解決するケースもあります。
但し、なんでもかんでも内容証明で解決を求めると、後日の紛争に発展することもありますし、書き方によっては問題をこじらせることもあるので、慎重に作成する必要があります。
当事務所ではあなたに代わって内容証明郵便を作成しますので、問題をかかえている方は一度ご相談下さい。
きっと問題解決の第一歩が踏み出せます。
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内容証明郵便を出して良い場合もありますが、反対に出すことで問題になるケースもあります。
たとえば、いくら問題解決に時間がかかっていても、最終的に話合いでまとまるケースも多いです。
最終的に法的手段によって問題解決を望むのであれば、最初から内容証明郵便で自分の主張を文書に記することで相手方の出方をみることができますが、多くの人は法的手段まで考えていないはずです。
悪徳商法などにだまされたりした場合は別として、普段の生活上のトラブルに関しては、「できれば話し合いで解決したい。」と願うのが当然の考えです。
特に近所の問題や友人とのお金の貸し借りなどでは、内容証明郵便を出すことで、今後の付き合いに影響してきます。
こういった話し合いで解決できそうなケースでは、まず話し合いをして、それでもだめなら第三者を入れて再度話し合いをします。
それでもだめなら、内容証明郵便を出すことを考えた方が良いでしょう。
この場合、内容証明郵便は最終選択になります。
また、内容証明の内容によって問題が助長される可能性があります。
たとえば、本来なら話し合いで納得してもらえる相手なのに、自分が有利だからと好き勝手に書いて出すと、相手方はその時点で話し合いで妥協するつもりだったのを考え直し、問題がより複雑になってしまうケースもあります。
このような場合は、相手の出方を見極めて内容証明郵便を出すべきか、話し合いで解決するか決める必要があります。
内容証明郵便を出すことで一番問題になるのは、受け取ったことで、相手方に証拠を隠滅される可能性があることです。
相手方が何らかの証拠を持っている場合に内容証明郵便を受け取ると、自分にとって不利益な証拠は捨てられたり、隠されたりして返って解決が難しくなる可能性があるので、内容証明郵便を出す以上、それなりのリスクを負うことを理解する必要があります。
当事務所では、お客様の実情をお伺いした上で、内容証明郵便の必要の有無をご説明しますので、お気軽にご相談下さい。
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内容証明郵便の目的は、将来のトラブル発生を防ぐ為や、既に発生したトラブルを解決する為です。
将来のトラブルを未然に防ぐものとしては、金銭の請求や、契約解除、建物の引き渡し等です。
そして、内容証明郵便で多いのが、「既に発生したトラブル」を解決する一つの手段として利用されることです。
内容証明郵便は普通の手紙とは違い、相手に「ケンカを売る」ことです。
ですから、全てのトラブルに内容証明郵便を出して良いわけではありません。
出して良くないケースとして、次の場合などです。
1.相手に誠意がみられるとき
「借金を一括清算できないけど、毎月3万円ずつ支払う。」と言ってきた場合や、「次のボーナスのときに全額支払う。」といった、相手がその気になって返済すると言っているのに、内容証明郵便で「すぐに、一括清算しろ。」と書き送ると、支払う気が失せて、受け取れるものが、受け取れなくなる可能性があります。
このように、相手が誠意を示しているときは、自分にとって若干不利であっても、内容証明郵便を出さずに、その内容を文章化(契約書を作成する)して解決する方が得策です。
2.自分に弱みがあるとき
相手が悪いと思っていても、その原因をよく調べると自分にも弱点がある場合です。
例えば、リフォーム業者がお客の家をリフォームをしたのに支払金が未回収ですが、施工した壁のクロスの張り方が悪く、隙間があったり、壁からクロスが剥がれていた、といったケースです。
このようなケースで内容証明郵便で売掛金を請求すると、客も作業の杜撰さを理由に、反対に訴えられる可能性があります。
自分にも弱点がある場合は内容証明郵便は出さないで、謙虚に交渉を進め、多少譲歩してでも妥協点を探して、その旨を契約書として作成しましょう。
3.問題解決後も親しく付き合いたい場合
相手が隣人や職場の同僚などとトラブルになった場合で、たとえトラブル解決しても、これからも付き合う必要があります。
例えば、会社の同僚にお金を貸したが、いつまでたっても返してくれないからと、内容証明郵便を出して、返してもらっても、従来のような親しい関係に戻ることはできません。
これからも今まで通りの付き合いを求めるならば、内容証明郵便を出さずに、交渉して解決すべきです。
4.手形が不渡りのとき
手形が不渡りになると、内容証明郵便を出したところで、殆ど効果ありません。
振出人が手形を不渡りにするのは、倒産を覚悟したからです。
そのような人物に内容証明郵便を出したところで、支払うことはありません。
振出人が契約不履行等の資金不足以外で不渡りにした場合は、手形交換所に供託金を入れてますから、すぐにこの供託金を仮差押えする必要があります。
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内容証明郵便は、自分の意思を相手に届ける「手紙」であり、法的効果が得られる「郵便」です。
内容証明郵便が使われる例として、契約の解除、債権譲渡の通知、債権放棄の通知等といった、トラブル解決の手段として使われます。
内容証明郵便は
① 相手にいつ・どんな内容の手紙を出したかを、証明できます。
② 出すことで、相手方に心理的強制力を与えることができます。
しかし、①と②の効果があっても、問題が解決できるかは、保証できません。
大切なのは自分が伝えたいことを、確実に相手方に送ることです。
必ず「内容証明郵便」にすべきケースとは
① 契約を解除するとき
契約解除するには、相手方に解除の「意思」を伝える必要があります。
勿論、口約束も契約の一つですから、口頭で伝えることも可能ですが、後で言った・言わないの問題が起こりますから、必ず内容証明郵便で通知して、その通知書を保管しておく必要があります。
② 債権譲渡を通知するとき
例えば、A社がB社に1000万円の商品を売った場合は、当然A社(債権者)はB社(債務者)に対し、1000万円請求できます。
そしてA社は1000万円の売買代金請求権(債権)を持っています。
この債券は第三者Cにも譲ることができます。
譲り受けた人Cは、B社に対し1000万円を請求し受け取ることができます。
ですから、債権譲渡する場合、譲る人(A社)と譲り受ける人(C)とが「譲ります」・「譲り受けます」という契約をします。
この債権譲渡の契約をしたら、譲り渡す人(A社)から債務者(B社)宛に、債権譲渡をした旨の通知をします。
この通知があって譲り受けた人(C)は債務者に、債権譲渡されたので1000万円請求できますし、債務者(B社)は1000万円支払わないといけません。
債権譲渡した通知は、譲渡人(A社)が行います。
反対に債権を譲り受けた人(C)がB社に債権譲渡を受けた旨の通知を出しても、「債権譲渡の通知」をしたことにはなりません。
この債権譲渡の通知は、必ず「内容証明郵便」を送付する必要があります。
③ 債権を放棄するとき
業者同士の取引で相手方が倒産して、売掛金が回収できないことがあります。
そのままにしておくと帳簿上その債権は資産として計上されているので、税務上損をします。
回収できない債権を持っていてもしょうがないので、その売掛金の債権を放棄することで、放棄した金額を損金として処理することが出来ます。
税務対策として、債務者に対して「債権を放棄します。」という通知する場合には、必ず「内容証明郵便」にして証拠を残しておきます。
こうしておくと、後日税務署から債権放棄の証拠の提出を求められたら、内容証明郵便の債権放棄通知書を提出すれば良いです。
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これまで内容証明郵便の効果や問題点を説明してきましたが、もしあなたが内容証明郵便を受取った場合どう対処すれば良いでしょうか?
一部の業者を除いて、大抵の人は一生に何度も受取るものではありません。
差出人も現在問題になっている相手ですし、行政書士や弁護士から送付される場合もあります。
しかも、ある日突然、配達員から直接手渡しで「書留」郵便を受取り、驚いて中を開くと一方的な内容が記載されています。
あなたはどうしますか?
記載されている内容を、そのまま受け入れますか?
それとも、当然受け入れられないとして、断固拒否しますか?
内容証明郵便は、一方的な内容で書かれています。
ですから受け入れる意思がない場合は拒否すれば良いし、受け入れる意思があるなら承諾すれば良いのです。
但し、内容証明郵便は相手方の一方的な意思表示ですから、受け入れがたい内容が多いのが事実です。
一つの例をとって内容証明郵便を受取ってからの対応を考えましょう。
たとえば、下記のような内容証明郵便が届きました。
以前から賃貸人Aさんは家主Bさんから家賃の増額を求められいましたが、Aさんは明確な回答をしていませんでした。
すると、ある日BさんからAさんに内容証明郵便が届きました。
家賃増額請求書
私は大阪府堺市堺区中瓦町XXX番地にある、私の所有マンションである堺シティプラザ 501号室を、平成15年4月1日から貴殿に月額家賃7万円で賃貸していますが、賃貸契約から既に17年経過し、これまで家賃増額しなかったので、令和2年5月1日より1カ月家賃を10万円に値上げさせて頂きますので、よろしくお願いします。
AさんはこれまでBさんに何度も家賃値上げを要請されていましたが、Aさんは不況を理由に、値上げをやんわりと拒否していました。
Aさんとしては不況で会社の給料が上がらないのに家賃が3万円も上げられたら、今後の生活が厳しくなりますし、Bさんは17年も貸しているのに家賃を上げられないのは、理不尽であると考えます。
お互いに理由があっての話し合いでしたが、両者とも合意点がなかったので、Bさんは最終手段として、内容証明郵便を出して解決を求めることにしたのです。
また、内容証明の末尾には下記のような文言が記載されている場合があります。
「もし貴殿が本書到着後7日以内に承諾頂けない場合は、法的措置をとらせて頂きますので、右念のため。」
では、Aさんは受取り後、7日以内にBさんの主張を承諾して、3万円の増額を受け入れなければならないのでしょうか?
もちろんAさんがこの条件に納得すれば、受け入れれば良いですし、嫌なら拒否すれば良いです。
建物の賃貸借契約は、借地借家法が適用されるので、契約期間が満了しても特別な事由がない限り、自動的に契約は継続しますから、期限が来ても原則終了しません。
これは借家人保護の為、借家人を簡単に借家から追い出さないようにしているからです。
また、借地借家法では、家賃の値上げや契約の解除を求める場合は、通知を出す必要があります。
家賃の値上げは家主が賃貸人に値上げ請求しない限り、いつまでたっても値上げできません。
まさか賃借人が自分から、家賃を上げてくれと主張することはあり得ません。
ですから、Bさんとしては17年も値上げしなかったから、今回は値上げして良いだろうと判断した次第です
通知は口答(口で伝える)でもできますが、通知をしたという証拠が必要なので、書面でする必要があります。
しかし、AさんとBさんは話し合いではまとまらなかったので、Bさんは書面での通知として、内容証明郵便をAさんに出しました。
Bさんとしては家賃の値上げはある程度理解はできるものの、一気に3万円の値上げは納得できません。
家賃の値上げは、賃貸人の納得がなければスムーズにいきません。
ですから賃借人は、家賃値上げに納得できなければ拒否すれば良いです。
では、内容証明郵便を受取ったら、必ず内容証明郵便をで回答する必要があるでしょうか?
必ずしも内容証明郵便で返答する必要はありませんが、回答を証拠として残す場合は内容証明郵便で、回答すれば良いでしょう。
また、よく末尾に「本書面到着後XX日以内にお支払い下さい」と書かれていますが、それは相手方の希望日数であり、受取った者から言えば勝手に内容証明を送ってきた上に、日にちまで指定するなんて非常識であると考えますが、これは相手方の策略であるので、それほど神経質になる必要はありません。
それより内容証明郵便を受取って、あなたはどう対処するかが重要です。
本例の場合、もしAさんが家賃の値上げに納得できれば、その要求を受け入れれば良いし、減額を希望する場合は、いくら減額できるかBさんと交渉する必要があります。
その交渉で妥協点がでない場合は、賃貸人は自分で適正と判断した家賃を、法務局へ供託します。
この供託によって家主に家賃を支払ったことになるので、家賃不払いで契約解除されることはありません。
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