明治民法は家督制度を基に家長が親の財産を受け継いできましたが、戦後の民法は「相続人の平等」が原則で、基本的に、たとえ親に不義理をしていても相続分が他の相続人と差別されることはありません。
しかし、親にとって普段不義理にしている子に、自分の相続財産を平等に与えるのは違和感を感じるかも知れません。
そえに、たとえ遺言書で、不義理の子に財産を与えないと書いても相続人には「遺留分」がありますから、遺留分請求されたら他の相続人は遺留分を払わなければなりません。
そこで必要なのが遺言書の作成と同時に「遺留分放棄」の手続を行うことで、「争族」を回避することができます。
しかし、推定相続人の相続分の生前放棄は認められません。
ですから事前に、「相続を受けない」旨の書面を作っても、法的には何ら拘束されません。
ではどのように遺留分の生前放棄をするのでしょうか?
遺留分の生前放棄を行うには、家庭裁判所での許可を得る必要があります。
因みに、遺留分放棄は平成16年(司法統計年報)で全国で1117件許可されています。
要するに「遺留分放棄の許可の審判」を請求しなければなりません。
この請求により家庭裁判所は放棄についての調査を開始して、請求に正当な理由があれば許可されます。
家庭裁判所の遺留分の許可基準は下記の通りです。
① 遺留分放棄が推定相続人本人の自由意思に基づくものであること
② 放棄の理由に合理性と必要性があること
③ 何らかの代償性があること
不許可になる原因として、親や配偶者や他の推定相続人からの強要や一方的な不利益になる場合です。
③の代償についても生前贈与などを受ける場合でも実際に履行されている必要があり、これからやりますでは該当しません。
遺留分放棄は相続人の一人が遺留分を放棄しても他の相続人の遺留分が増加しませんし、相続が始まってからの遺留分の放棄は自由で、家庭裁判所への許可も必要ありません。
また、遺留分放棄されても遺言書が無いと、遺留分の放棄は相続の放棄ではありませんので、相続人が集まって遺産分割協議が必要になります。
せっかく遺留分放棄させたのなら、遺言書を作成する必要があります。
さらに相続人が遺留分放棄しても相続人であることに変わりがないので、被相続人に借金があった場合は借金を背負うことになります。
こうならない為にも、遺留分放棄したから被相続人の財産は関係ないと無視していると、突然支払い請求書が送られてくることもあるので、財産目録をチェックする必要がありますし、資産内容によっては相続放棄の手続をする必要があります。
このように戦後の相続は平等主義が原則で、被相続人の相続財産は基本的に相続人が一律に財産配分されるようになった為、あげたくない子供にも分配しなければならなくなりました。
特に会社や商売をされている方は、事業を引き継ぐ相続人に資産を多く相続させる必要があるので、遺言書を作成するだけではなく、遺留分についても考慮する必要があります。
しかし、問題を避けるつもりで遺言書を書いたところでも遺留分が発生し、被相続人が希望する分配ができません。
ですから、生前贈与などを利用して、あらかじめ特定の推定相続人に財産を分け与えることで、遺留分放棄という手続が可能になります。
しかし、放棄するにしても推定相続人の同意が必要ですし、遺言書は通常の自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言で作成する必要が出てきますし、速やかに遺産分割協議を行うには遺言執行人が必要になります。
これらの手続を一人でするには相当の時間と労力が必要になります。
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