不倫とは法的には不貞行為といいます。
民法770条第1項には離婚原因の一つとして、「配偶者に不貞な行為があったとき。」と明記されているとおり、婚姻期間中の不倫=不貞行為は、配偶者から離婚請求されると離婚事由として認められる可能性が高いです。
また、不倫=不貞行為とは、配偶者のある者が自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思に基づくものであるか否かは問わない(最判:昭和49年)行為です。
要するに夫婦は互いに貞操義務があるのに、配偶者以外の者と肉体関係を持つことを、法律は認めていないということです。
では、異性とメールをしている場合や、食事やデートをしているものの、肉体関係がない場合は不倫とは言えませんが、それ以降の状況によってはどうなるか分かりません。
ですから不倫を証明するには、配偶者以外の者と肉体関係がある(または「あった」こと)ことを証明できないと、なかなか難しいでしょう。
不倫の相手が、配偶者が既婚者と知っていて不倫したこと。
民法709条による、不法行為に基づく損害賠償請求には、故意または過失が必要ですから、交際相手は、配偶者を既婚者であると認識している、又は注意すれば認識できたことが必要となります。
ですから、配偶者が独身と嘘をつき、それを信じての性行為は、責任追及が難しくなります。
既婚者と不貞行為を行った場合、二人の不貞行為は、もう一方の配偶者に対して共同不法行為となります。(民法719条)
ですから、不法行為を受けた配偶者は、有責配偶者に慰謝料請求できると同時に、その不貞行為の相手に対しても、慰謝料請求をすることができます。
慰謝料とは、相手の浮気や暴力などによって、「精神的苦痛」を受けたことに対する損害賠償金です。
では、どのような場合に慰謝料は認められるのでしょうか。
慰謝料が認められるためには、相手方の行為が違法であることが前提となります。
精神的苦痛を感じていても、相手方の行為が違法とはいえない場合、慰謝料は認められません。
不貞行為と呼ばれる浮気や不倫、それから暴力などが違法行為の典型的な例です。
単なる性格の不一致や価値観の違いでは違法行為といえないことが多く、ほとんどの場合、慰謝料は請求できません。
慰謝料が認められるケース
・ 不倫や浮気
・ 配偶者に対する暴力行為、虐待、遺棄
・ 生活費を渡さない等の、配偶者としての義務を果たしていない
・ 通常の性交渉の拒否、性的不能
慰謝料が認められないケース
・ 相手方に離婚の原因がない
・ お互いに離婚原因の責任がある
・ 価値観の違いなど、離婚原因に違法性がない
では、慰謝料はどれくらい請求できるでしょうか?
精神的苦痛を客観的に算定するのは困難です。
そのため明確な基準はありません。
算定にあたって考慮される要素としては、
・ 離婚原因となった違法行為の責任の程度、期間、回数
・ 精神的苦痛の程度
・ 社会的地位や支払い能力
・ 請求者の経済的自立能力
・ 請求者側の責任の有無や程度
・ 結婚(もしくは同居)の期間
何より、大切なのが不倫(不貞行為)の証拠があることです。
示談する場合は勿論、裁判の場合も不倫の証拠が必要です。
当事者が承諾しているなら問題ありませんが、承諾しない限り、証拠がなければ正当な請求かどうかの判断ができません。
示談するにしても、交渉相手を納得させ、言い逃れさせないためには、不倫を証明できる証拠が必要です。
不倫の請求が認められるには下記の条件が必要になります。
1.不倫(不貞行為)があること
配偶者が異性と肉体関係があること
2.不倫相手が配偶者が既婚者として認識していたか、認識できる状況であった
たとえば、配偶者が不倫相手に自分が既婚者であることを伝えていた場合や、肉体関係後に不倫相手の家に泊まらず必ず帰宅したり、結婚指輪をしている場合です。
3.夫婦関係(婚姻関係)が破たんしていないこと
たとえ夫婦であっても家庭内別居していたり、家を出て別居していたり夫婦関係が既に破たんして結婚関係が継続できない場合は、不貞行為があっても慰謝料請求できません。
4.消滅時効にかかってないこと
不法行為(不倫)の消滅時効は不倫相手を知ったときから3年か、不法行為のときから20年ですから、それまでに請求しなければなりません。
不貞行為(不法行為)の消滅時効は、不法行為の損害および相手(加害者=不倫相手)を知ったときから3年、不法行為のときから20年です。
不法行為の損害および相手(加害者)を知らなければ、3年の消滅時効にはかかりませんが、不法行為の損害および相手(加害者)を知らなくても、不法行為のときから20年で、消滅時効にかかります。
注意すべきことは、不法行為のときから20年経たなくても、不法行為の損害および相手(加害者)を知ったときから、3年たてば、消滅時効にかかります。
どちらかの期間が経過すれば、消滅時効が完成します。
要するに、両方を比べて短い機関が、消滅時効になります
また、消滅時効が完成したとしても、不倫の慰謝料請求権は当然に消滅するものではなく、相手が時効で消滅したと主張(援用)しなければなりません。
民法第724条には、「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」と記載されています。
慰謝料の請求権は、不法行為による損害賠償請求権の性質を持ち、3年の時効になります。
3年を経過したら、慰謝料の請求権は消滅してしまいます。
したがって、浮気をされたということ知ったときから3年、あるいは、浮気があったことを知らなくても、浮気があったときから20年を経過した場合には消滅時効にかかるため、相手方が時効を主張してくることもあるので注意が必要です。
そこで時効期間の経過を防ぐ為にも、早めに慰謝料請求の調停申立をお勧めします。
3年の時効期間内に権利を行使し、判決として確定すれば10年の時効期間となります。
なお、時効期間内であっても、不倫関係が解消して時間が経ってしまうと、事実関係や証拠などがうやむやになり、慰謝料を請求することが難しくなってしまうケースも少なくないため、不倫の事実を知り、慰謝料を請求することを考えている配偶者は、できる限り早く行動に移した方が良いです。
また、消滅時効にかかっていなくとも、慰謝料は請求しないとの示談が行われていると、慰謝料を放棄したものとして請求できません。
浮気を知った配偶者が一時的に感情的になって「慰謝料なんかいらない!」といった軽はずみな言動は、後々、トラブルのもとにもなりかねませんので、くれぐれも注意しましょう。
婚姻関係がすでに破綻した状態での不貞行為(不倫)は、保護する権利が無いとして、不貞行為の慰謝料請求を認めない旨の判例が出ています。
「夫婦関係が破綻していた。」との主張は、夫婦が完全に別居している場合には証明しやすいですが、家庭内別居だと第三者には分かりにくく、争いになるケースがあります。
配偶者の不倫が見つかり、慰謝料を請求する場合は、誰に請求できるでしょうか?
請求できる相手は不倫をした配偶者と不倫相手の両人それぞれに対して、不倫による慰謝料請求ができます。
では、慰謝料はいくら請求できるでしょうか?
慰謝料請求できても、高額な請求ができるものではありません。
離婚裁判で弁護士を雇って勝ったとしても、婚姻20年位でも慰謝料は500万円程度しか取れないなるケースもあります。
ですから、たとえ勝訴しても弁護士費用を払い、公開の法廷で恥ずかしい思いまでして得られる代償は低いと考えられます。
因みに、裁判外での個別請求では100万円前後が多いです。
しかし不倫は、配偶者に精神的ダメージを与えることができるので、金銭以外のメンタル面での勝利にはなります。
不倫(不貞行為)の相手方に対する慰謝料の金額には算定基準はなく、具体的に相場がいくらと決まっていません。
慰謝料の金額は、不貞行為による精神的苦痛・被害の程度や個々の事情が考慮されて決められます。
慰謝料の算定に考慮されるのは、被害を被った配偶者が受けた精神的苦痛・被害の程度や、不貞行為の発覚によって夫婦の婚姻関係が破綻したかどうか、結婚年数、不貞行為の期間・回数、また相手の資産、社会的地位などを総合的に判断します。
話し合いで解決できない場合は裁判での判決を仰ぐことになりますが、たとえ裁判したからといって高額な慰謝料を得ることは少なく、上記相手方の状況等を勘案します。
過去の判例をみても、50万円から500万円の間が多く、芸能人みたいに数千万円になることはごくわずかです。
ということは、離婚を目的として慰謝料請求するなら理由に叶うことになりますが、配偶者にお灸をすえるなら、裁判する為に何十万も弁護士費用をかけて、数十万円程度の慰謝料を勝ち取っても割に合いません。
精神的被害を受けた当人としては、請求金額はいくらでも構いませんが、あまりにも高額な慰謝料になりますと、話がこじれてしまい、支払われないこともあります。
また、裁判に持ち込んでも金額の根拠を問われますから、多額な請求は認められにくいです。
また、たとえ高額な支払命令が出ても、相手に支払い能力がなければ、支払いは望めない可能性があります。
離婚での慰謝料が請求できるのは下記のような場合です。
・ 不倫・浮気・不貞行為があった場合
・ 一方の暴力・精神的虐待・悪意の遺棄などがあった場合
不倫が原因で離婚することになった場合の慰謝料の額は、婚姻期間や相手方の収入、今後の生活状況等によりますが、財産分与と合わせ、一般的には数百万円程度が多いようです。
参考に、離婚する場合の慰謝料の目安は下記のとおりです。
但し、実際に請求する場合は、個別事案になりますおで、それぞれの原因や支払能力によって違います。
・ 婚姻期間が、1年未満 100万円~150万円
・ 婚姻期間が、1年~5年 150万円~250万円
・ 婚姻期間が、5年~10年 250万円~400万円
・ 婚姻期間が、10年以上 400万円~500万円
婚姻期間が長かったというだけでは、それ程慰謝料は取れません。
配偶者の不倫の証拠を得た場合、もちろん自分の夫や妻には直接直談判すれば良いですが、不倫相手にも慰謝料請求したい場合どうすれば良いでしょうか。
いきなり裁判で決着を考えるかも知れませんが、すぐに裁判する人はまずいません。
もちろん、相手方に電話や直接会って請求することもできますが、後で言った・言わなかったといった問題が発生するケースがあります。
そいった水掛け論を避けるために「内容証明郵便」を使い、相手方に送り付ければ良いです。
また、慰謝料請求する以上、必ず証拠を収集しておかねばなりません。
中には証拠を出さずに相手側が降参して慰謝料を支払うケースがありますが、後日の紛争を考えて出来る限りの証拠を集めておきましょう。
ただし、内容証明には詳しく証拠を羅列する必要はありません。
なぜなら、受け取った側は内容証明を読んだ時点で、状況を把握できるからです。
内容証明は当事務所で作成しますので、
内容証明作成を考えている方は一人で悩まずにご相談下さい。
きっと、解決策が見つかります。
しかし、内容証明で解決できない場合は、裁判所で調停する必要があります。
それでもだめなら訴訟(裁判)するしかありませんが、裁判には弁護士が必要で、たとえ勝訴しても弁護士費用に数10万かかりますから、せっかく慰謝料を得てもその慰謝料を弁護士費用に相殺されますから、あまりメリットはありません。
また裁判は証拠が必要になりますから、証拠が乏しい訴訟は時間とお金が掛かる面でもメリットありません。
離婚や精神的苦痛を受けた場合で慰謝料請求するには相手方への謝罪を示す意味で、示談書の作成が有効な解決策のひとつになります。
しかし、慰謝料の金額や示談内容の合意に至るまでは、いろいろな問題に直面します。
たとえば、感情的なわだかまりがあって、なかなか示談に応じてくれなかったり、慰謝料の金額で折り合いがつかなかったりするケースは実務上多いです。
被害者の場合、最初の段階では、直接相手と会いたくないケースが多いので、電話やメールなどで相手方と交渉します。
そこで交渉がまとまれば良いのですが、話がまとまらない場合は、内容証明郵便を相手方に送ります。
このとき慰謝料請求をする法的根拠を具体的に明示して、もし期日までに回答がない場合や、要求を受け入れない場合は刑事的対応や裁判手続をすると予告します。
内容証明郵便については、
内容証明でも進展しない場合は、裁判で判決を求める必要があります。
しかし、互いに裁判まで争う気が無い場合は、内容証明郵便を送付後も示談内容の条件を緩和して、合意できる着地点を取り決めします。
合意が出来た場合は、口約束で終わらせずに、必ず「示談書」や「覚書」を作成して支払額・支払方法・支払期限等を決めます
口約束も契約の内ですから有効ですが、後で「言った」・「言わなかった」で再度揉める可能性があり、せっかく合意した条件を反故にされるリスクがあります。
そこで、合意内容を明確にするため、必ず示談書等を作成するようにします。
特に慰謝料を分割払いにするような場合は、確実な履行をさせるため、公正証書で強制執行認諾事項を入れて作成するのが理想的です。
不貞行為をした相手に慰謝料を請求する場合は、当然当人と直接話し合う必要があります。
しかし、当人が出てこなかったり、代理人と名乗る人物が出てくる場合があります。
当人が出てこない場合や、自身が相手の顔を見たくない場合は、内容証明郵便で慰謝料を請求することもできます。
一般の人にとって内容証明郵便は、一生に一度受け取るかどうかの郵便ですから、受け取る相手には相当のプレッシャーになります。
また、たとえ受け取らなかっても、それが証明になりますから、内容証明郵便は有効な証拠になります。
内容証明を書く場合で気を付けなければならないことは、感情のあまり、脅迫めいた文章を書いたり、嘘を書いてはいけません。
自分が被害者なのに、そのような内容を書いた為に、反対に不利になる場合があります。
特に感情のまま脅迫まがいの文面を送ると逆に訴えられてしまう恐れがあるので、文面には注意が必要です。
ですから、行政書士や弁護士等専門家に作成・アドバイスをお願いするのもよいでしょう。
内容証明郵便を送っても交際が継続していたり、話し合いができない場合は、不倫相手の住所地の簡易裁判所で、調停を申し立てることになります。
しかし、調停は強制力がありませんので、示談交渉がまとまらなかったり、調停の場に相手が現れないといった場合には成立しないというネックはあります
調停で話し合いがまとまれば、調停調書が作成されます。
調停調書は裁判の判決と同じ効力を持ちますので、調書内容を確約しなければ、強制執行をすることも可能です。
しかし、調停が不調に終わったら、地方裁判所に訴訟を提起することになります。
ちなみに、浮気相手に対する慰謝料請求は調停前置主義には当てはまらないため、いきなり裁判に持ち込むことも可能です。
裁判となると、訴訟に関する専門知識はおろか、駆け引きが慰謝料の金額を左右します。
更に裁判では代理人への報酬が発生し、慰謝料は取れたものの、経費と相殺したら殆ど残らなかったという悲劇もあり得ますので、訴訟を考えている方は注意が必要です。
また、配偶者の不貞行為を理由とする離婚訴訟と、異性の愛人に対する慰謝料請求訴訟を併せて家庭裁判所に提起することもできます。
裁判では有責配偶者と不倫相手の性行為(肉体関係)の確認もしくは、推認できる証拠が必要です。
しかし前述と同様に、裁判になると弁護士費用が高額になり、精神的や時間的にも拘束されます。
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